「立地が悪くてお客さんが来ない。」と居酒屋を営むご夫婦から相談を頂いた時のことです。
実際に伺ってみると、お店は駅から徒歩15分、裏道で人通りも少なく、
たしかに飲食店には不向きだと思ってしまうような場所でした。
それでも店主は
「気に入ってくれればリピートしてくれるはず!
まずは知ってもらわないと!」と、様々な販促を行っていました。
新聞折り込みにチラシを出したり、
クーポン誌に広告を掲載したり、
駅前でのティッシュ配ったり、
HPやブログ、facebook、ツイッターなどのインターネットを利用したり、
とにかく効果があると聞いた集客ツールはなんでも試していました。
ところが、一時的な効果はあっても、継続的にお客さんが増えることはありませんでした。
やはり「駅から遠い」というのが要因のようでした。
そこで私は「駅から遠いという人」ではなく
「お店から近い人」にターゲットを変えることを提案しました。
さらに「お店から近い人」を「お店から徒歩10分圏内で働く人」に絞り、
その人たちをお店にお招きして「試食会」を開催することにしたのです。
そして、開催日を決め、徒歩10分圏内にあるコンビニ、
うどん店、喫茶店、消防署、市役所、警察署等など、
商店や施設を3日間で300軒を訪問し、招待状を配布しました。
試食会当日は塾の講師、企業のOL、スーパーのパートさん、
洋服屋のオーナー、家電量販店の店員、スナックのママ、
介護施設の介護士などたくさんの方々が来店してくれました。
参加者からは「こんなところにお店があるなんて知らなかった!」
「美味しい!このお店を応援したい!」と嬉しい声をたくさんいただきました。
さらに嬉しかったのは、試食会に参加された方が次の日に再来店してくれたことです。
そして、次の日もその次の日も、試食会に参加された方々はリピートしてくれました。
中には宴会を予約してくださる方もいました。
なぜこんなにもリピートしてくれるのか理由を聞くと「だって近いから」という答えが返ってきました。
試食会の招待状はお店から徒歩10分圏内にしか配布していないので
「近い」のは当然と言えば当然です。
つまり、駅を利用しない人にとっては駅からの距離は関係なかったのです。
実は、これまで高い広告費をかけて掲載していたクーポン誌は駅で配布されていました。
つまるところ、店主は駅を利用する「お店から遠い人」を集客しようとしていたのです。
飲食店に限らず、より多くのお客さんを求め、より遠くから集客しようとして、
灯台元暗しになっているお店は少なくありません。
というのも今は広告代理店やインターネットなどを利用すれば
誰でも簡単に広く告知できる時代です。
たくさんの人を集客しようとした結果、
知らず知らずのうちに商圏を広げてしまうのです。
しかし、どんなに多くの人にPRできても
「遠くて来店できない」のであれば意味がありません。
来店してくださるお客さんはもっと身近にいます。
地域密着店が来客数を増やすには
顔の見えない不特定多数ではなく、
いつもお世話になっているご近所さんに来店してもらうことです。
地元客を集客するには商圏を広げるのではなく「商圏を絞る」ことが大切なのです。