「業界に限界を感じているので事業の多角化を考えている。
幼児向けの英会話教室をやろうと思っているがどうだろうか?」と、
IT企業を10年間経営された方から相談を頂きました。
あまりに突飛な事業展開だったので、何か勝てる秘策があるのか伺うと、
業界知識や経験があるわけでもなく、強い想いや覚悟も特にないようでした。
ただ「流行っているから、儲かりそうだから、勧められたから」という理由でした。
正直、そうした理由で始めても事業が成功するとは思えません。
たしかに時代の変化に応じて取り扱う商品を増やしたり、
事業を多角化したりする企業は少なくありません。
しかし、新しいお客さんが欲しいからといって安易に商品を増やすのは危険です。
取り扱い商品を増やせば在庫も増えるし、
従業員は新しい商品知識も学ばならければならず、お金も時間もかかります。
そのうえ、業界の新参者が既に実績のある企業からシェアを奪うのは並大抵なことではありません。
結果、既存事業が疎かになり、既存客が離れてしまいかねません。
だからといって、同じ商品を同じお客さんに
同じように販売していたのでは企業の発展はありません。
では、未来を生き抜くためにはどんな事業展開をすれば良いのでしょうか。
それは「売れる見込みのある商品」を売ることです。
「売れる見込みのある商品」とは
「既に買いたいお客さんがいる商品」、「既存のお客さんが欲しがっている商品」です。
たとえばシニア層の既存客が多ければシニア向けの商品、
主婦の顧客情報が豊富にあれば主婦向けの商品、
という具合に既存のお客様を軸に新商品を展開するのです。
つまり、「新しいお客さんが欲しい」から「新商品を取り扱う」のではなく、
「既存客が欲しがっている」から「新商品を取り扱う」のです。
これこそ、地域密着店の「御用聞き屋」です。
これは「既存客との信頼関係」があるからこそ成せる業です。
特に高額な商品であればあるほどこれまでの信頼関係が重要です。
リフォームや介護用品が売れるのはこれまでの信頼関係があり、
お客さんが欲しがっている商品だからです。
もし、既存のお客さんが欲しがっていない商品を無理やり売ろうとすれば、
これまで築きあげた信頼関係が壊れてしまいます。
それに信頼関係のないお客さんに新商品を提案したところで売れるはずがありません。
既存客が欲しがる商品を提案すれば、
苦労して新規客を開拓する必要がないだけでなく、
既存客の満足度が上がります。
既存客の満足度が上がれば自然と紹介客が増えます。
既存客が連れてきた紹介新規客は、
既にお客さんが自社のPRをしてくれていることも多いため、
信頼関係ができるのも早く、上客になってくれる可能性も高くなります。
新しいお客さんが欲しいと思ったら、
「既存のお客さんはもうこれ以上買ってくれない。」と勝手に判断する前に、
既存のお客さんは「どんな商品、どんなサービスを求めているのか」
ご要望をしっかりと伺い、その要望に応えることです。
そうすれば、必ず、既存のお客さんは新規のお客さんを連れてきてくれます。